自然遊水地・蕪栗沼

蕪栗沼は宮城県の北上川水系にある面積約150haの湿地です。沼といっても大部分はヨシやマコモなどの植物におおわれていて、水面は少ししかありません。沼は天然記念物の渡り鳥、マガンの国内有数の越冬地であり、毎年10万羽以上が飛来します。

オオヒシクイやオジロワシなどの天然記念物、オオタカやチュウヒなどの絶滅危惧種など219種もの鳥類が観察されています。
周辺の水田に冬期間水を張り、渡り鳥の休息の場として提供するとともに、春から秋にかけては無農薬・無化学肥料で米を栽培し、人と渡り鳥との共生を目指した取組みが行われています。

蕪栗沼の名前の由来について

蕪栗沼の名前の由来には、二つの説があります。
最初の「蕪(かぶら)のように美味しい栗がとれたので蕪栗という名前が付いた」という説は、1761年に仙台藩の儒臣である田辺希文が編纂した「封内風土記」にある記述です。

一方、1776年に仙台藩は寮内郷村に書き出させた風土記「安永四年風土記御用書出」には「当村(蕪栗村)の熊野神社近くの畑に植えた蕪(かぶ)は、栗のような風味があったので、神名を蕪栗明神として崇め、やがてそれを村名に名付け候由、申し伝え候事」という記述があり、逆に「栗のような味のカブがとれたので蕪栗という名前が付いた」となっているのです。

どちらが正しいのかは、現在となってはよく分かりません。

ラムサール条約登録湿地[蕪栗沼・周辺水田]

平成11年、大崎市(旧田尻町)で渡り鳥の食害を補償する条例が制定され、これまで害鳥とされていたマガンとの共生を目指す動きが活発になります。
環境教育やグリーンツーリズムで蕪栗沼が活用され、農業者の間でも渡り鳥と共生する農法がはじまります。
平成17年には周辺水田とともにラムサール条約に登録されました。

「蕪栗沼・周辺水田」という名称は,日本最大規模のマガンの越冬地である特性に配慮し、えさ場となっている周辺水田も含めた形で登録になった非常にまれな例です。
単に農作物の生産の場としてだけではなく、渡り鳥にとっても重要な湿地として田んぼの存在が認められた結果と捉えています。

蕪栗沼に飛来する渡り鳥

マガンなどの渡り鳥は、冬の一番寒い時期が一番多く、また伊豆沼・内沼や化女沼など周囲の湖沼を行き来しているため、越冬している数は常に変化します。蕪栗沼で通常利用している数はマガンで約10万羽、オオヒシクイで約500羽、オオハクチョウで200羽、コハクチョウで100羽程度です。

蕪栗沼には自然への負担を軽減するために、常設の施設は極力建設していません。周辺水田もその名のとおり水田なので、施設等はありません。自然との出会いが楽しめる「蕪栗沼・周辺水田」ですので、魅力を十分堪能していただくためにもガイドツアーのご利用を薦めています。

蕪栗沼と観察会

蕪栗沼は、約1500種もの動植物が生息し、1年を通じてさまざまな自然の変化に出会うことができます。
付近には公園の中の宿ロマン館や加護坊四季彩館などを拠点に、夏はキャンプや草すべり、冬は渡り鳥の観察会などが体験できます。

交通
JR田尻駅から車で20分/古川ICから車で45分(蕪栗沼)/JR田尻駅から車で5分/古川ICから車で30分(公園の中の宿ロマン館)
問い合わせ
0229-39-2424(公園の中の宿ロマン館内 田尻グリーンツーリズム委員会)